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「生え替われば治る」と言われて迷うときに
園の写真で、下の前歯が上の前歯より前に出ていると気づいた。家族には「生え替われば治る」と言われたけれど、次の定期検診まで待ってよいのか決めきれない。そんな保護者の方に向けて、乳歯期の受け口の見方と相談の目安をまとめました。写真や年齢だけで決めず、噛み方などの様子も含めて歯科医師に伝えることが、判断の手がかりになります。
この記事の要点まとめ
- 生え替わりによる変化は年齢や写真だけでは見通せず、歯・顎・噛む機能を歯科医師が確認します。
- 噛みにくさや痛み、噛み合わせの変化があれば早めに相談し、写真や日頃の様子を伝えましょう。
- 相談後は経過観察となることもあり、治療の要否や時期は診察をもとに検討します。
乳歯の受け口は、生え替われば自然に治る?

乳歯の時期に噛み合わせが変わることはあります。ただ、お子さまの受け口がこの先どうなるかは、写真や年齢だけでは見通せません。歯の位置と顎の成長、そして噛む機能をあわせて確認することが、判断の土台になります。
乳歯期の噛み合わせは、どのように変わる?
受け口(反対咬合:下の前歯が上の前歯より前に出て噛み合う状態)には、前歯の傾きが主なものと、上下の顎の大きさや位置のバランス(骨格)が関わるものがあります。生え替わりや顎の成長に伴って見え方が変わる場合もあります。
一方で、早い時期に装置を使った研究では、治療後の顎や歯の位置の変化について、性別による差は小さいと報告されています1。家庭で「何歳になれば変わる」と見極められる基準はありません。「生え替われば治る」という言葉も、すべてのお子さまに当てはまるとは限らないのです。
ポイント
自然に変わるかどうかは、写真や年齢だけでは判断できません。歯と顎、噛む機能の三つをあわせて診ることが手がかりになります。
写真の見た目とあわせて、噛み方も相談する
当院に限らず、歯並びは見た目だけでなく、お口の健康や機能、体の発育とのつながりも踏まえて確認します。園の写真は気づくきっかけとして役立ちますが、撮る角度や表情で前歯の重なり方は違って見えるものです。
ご相談の際は、写真に加えて普段の様子も教えてください。
- 前歯で麺や葉物を噛み切りにくそうにしている
- 片側ばかりで噛む、食事に時間がかかる
- いつも口が開いている、舌を前に出す癖がある
保護者の方が気づいた小さな変化は、歯の傾きが中心なのか、顎の成長が関わっているのかを私たちが考える大切な材料になります。
次の定期検診まで待つ?先に受け口を相談する?

噛みにくそうな様子がある、噛み合わせが以前と変わってきた気がする。そう感じたら、次の定期検診を待たずに相談してかまいません。困りごとが特になく、検診の予定が近ければ、その場で伝える方法もあります。治療を始める時期は歯科医師にご相談ください。どちらの場合も、治療が必要かどうかを家庭で決めてしまわないことを心に留めておいてください。
食事中に噛みにくそうなら、先に受診する?
日常生活に影響が出ているなら、早めの受診を考える目安になります。
- 前歯で噛み切れず、奥歯だけで食べている
- 食べこぼしが増えた、食べ方が変わってきた
- 顎や歯の痛みを訴える
とくに痛みがある場合は、定期検診を待たずに連絡しましょう。
定期検診で相談するなら、何を伝える?
気づいた時期、噛み方の様子、見え方の変化を簡単にメモしておくと、診察で経過を伝えやすくなります。園の写真やスマートフォンで撮った写真があれば、持参してください。
こうした記録は、家庭で原因を突き止めるためのものではありません。歯科医師が変化をたどるための手がかりとして使います。
生え替わりを待つか迷ったら、まず相談を
当院への相談に限らず、子どもの歯並びが気になるときは、治療を始める時期を自己判断で決める前に歯科医師へ相談できます。「ちょっと気になるかも」と感じたときも、相談のタイミングです。
相談することと、治療を始めることは別のものです。今の状態を知っておくだけでも、次の判断がしやすくなります。
受け口を相談したら、すぐに治療を始める?
相談したからといって、その日に治療が始まるとは限りません。お口の状態によっては、成長を見守る経過観察になる場合もあります。
相談したら、すぐに治療が始まる?
一般に、成長に伴う歯並びと噛み合わせの変化を確認しながら、治療やケアが必要な時期を考えます。何歳から始めるかを年齢だけで決めることはせず、診察で確かめた状態をもとに判断します。
早い時期の治療は、始める時期やお子さまの特徴によって結果が一様ではないと報告されています1。軽い受け口に対する早期治療の研究も、少人数を対象としたものにとどまります2。だからこそ、お子さま一人ひとりの変化を見ながら時期を考えることが大切です。
ポイント
相談は、治療の開始を決める場ではありません。経過を見守ることも含めて、時期を考えていきます。
初めての相談では、何を確認する?
歯科医師は、前歯の当たり方、口を閉じたときの下顎の位置、奥歯の噛み合わせ、舌や唇の癖などを確認します。下顎を少し後ろに引いたときに前歯の先同士が当たるかどうかも、歯の傾きと顎の関係を考える手がかりの一つです。保護者の方が気づいた時期や変化も、あわせてお聞きします。
経過観察になったら、次はどうする?
次にいつ確認するのか、家庭でどんな変化に気をつけておくとよいか(生え替わりの様子、噛み方、口が開いていないかなど)を診察時に尋ねておくと心づもりがしやすくなります。
治療を提案された場合、通院の回数や期間、費用は内容によって異なります。乳歯期から生え替わりの時期に行う治療(一期治療)では、次のような点を確認しておくと見通しを立てやすくなります。
- 治療期間:装置を使う期間に加えて、その後に成長の様子を確認する期間がどのくらい続くか
- 通院の回数:装置の調整や確認のために、どのくらいの間隔で通うことになるか
- 費用:検査・診断料、装置料、調整料などを含めた総額がどうなるか(永久歯が生えそろった後に本格的な治療〈二期治療〉が必要になると、別に費用がかかります)
子どもの歯並びの治療は多くが自由診療(公的医療保険が適用されない診療)です。
一期治療で装置を使う期間や通院の間隔、装置の使用を終えた後の経過確認がいつまで必要かは、お子さまの状態によって異なります。費用も、検査・診断料、装置料、調整料などを含めた総額を受診先で確認してください。二期治療が必要になった場合の費用についても、あわせて医師にご相談ください。実際の期間・回数・費用は、医療機関や治療内容、使う装置、お子さまの成長の様子によって異なります。当院での期間・回数・費用は、診察のうえでご案内します。
治療に伴って起こりうる主なリスク・副作用には、次のようなものがあります。
- 装置の使い始めや調整のあとに、歯の痛みや締めつけられるような違和感が出るかは個人差があるため、医師にご相談ください
- 装置がこすれて、頬や舌、歯ぐきに口内炎や傷ができることがある
- 一時的に話しにくくなる、よだれが増えるなどの変化が出ることがある
- 装置の周りに汚れがたまりやすく、歯磨きが不十分だとむし歯や歯肉炎(歯ぐきの炎症)が起こりやすくなる
- 顎の成長に伴って治療後の噛み合わせがどう変わるかや、永久歯が生えそろった後に追加の治療が必要かは個人差があるため、医師にご相談ください
- 取り外し式の装置では、装着時間と治療の進み方には個人差があるため、医師にご相談ください
こうした点も、治療を始める前に歯科医師へ確認しておきましょう。
神埼市でお子さまの受け口を相談するときは?
迷いを抱えたまま時期を決めるより、普段の様子と受診のご希望を伝えて相談するほうが、次の一歩を選びやすくなります。治療時期については歯科医師にご相談いただき、ご家庭の予定も含めてお話しください。
受け口の要因と治療時期を考える
受け口は、前歯の傾きや顎の成長など、関わる要因が一人ひとり異なります。治療の要否や時期は、現在の歯並びや噛み方を確かめて考えます。
下のお子さまを連れて相談する場合
当院に限らず、下のお子さまを連れて受診する場合は、診察中の付き添いについて受診先に相談しておくとよいでしょう。受診時に伝えたいことも、あらかじめメモしておくと役立ちます。
仕事や送迎の予定に合わせて相談する
お仕事や園の送迎がある場合は、無理のない受診予定を立てましょう。通院が必要になった場合の回数や期間も、受診先で尋ねておくと予定を考えやすくなります。次の定期検診で相談する場合も、「受け口が気になっている」と伝えてください。
よくある質問
Q. 3歳の子どもが受け口の場合、治療は必要ですか?
A. 3歳という年齢だけで治療の要否は決まりません。乳歯の時期でも、噛み方や顎の状態によって早めの対応を検討する場合もあれば、経過を見る場合もあります。気になる様子があれば、一度歯科医師に状態を確認してもらいましょう。
Q. 受け口は家庭のトレーニングだけで治せますか?
A. 家庭での取り組みだけで受け口が変わるとは言えません。口呼吸や舌の癖などお口の使い方に関わるトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)は、歯科医師の診察を受けたうえで、お子さまに合った方法を指導のもとで行うものです。自己流で続ける前にご相談ください。
Q. 指しゃぶりや口がいつも開いていることは、受け口と関係しますか?
A. 指しゃぶりや口が開いたままの癖、舌の位置が歯並びや噛み合わせにどう関わるかは、お子さまによって異なります。受け口との関わり方は歯科医師が判断するため、普段の癖も含めて診察時にお伝えください。
Q. 取り外し式の装置を使うと、よだれが増えることはありますか?
A. 使い始めの時期は、お口の中の違和感からよだれが増えることがあります。慣れるにつれて落ち着いていくこともありますが、続くようなら無理をさせず、担当の歯科医師に相談しましょう。
参考文献
当院では受け口のご相談に対し、程度にもよりますが、お母様が受け口だとお子様に影響するといわれていることや、骨格性の場合は歯槽性よりも遺伝が強く関係しているとお伝えしています。3歳以下でのマウスピース矯正は難しく、プレオルソの対象は3歳~10歳頃までですが、お子様が矯正の必要性を理解できるかどうかも考慮し、前歯が生え変わった頃に反対咬合であれば矯正を検討するという判断をお伝えしています。
1. Arqub SA, Al-Zubi K, Iverson MG, et al. The biological sex lens on early orthopaedic treatment duration and outcomes in Class III orthodontic patients: a systematic review. European journal of orthodontics. 2022. PMID: 34498045 / DOI: 10.1093/ejo/cjab058
2. Ronsivalle V, Quinzi V, La Rosa S, et al. Comparative Analysis of Skeletal Changes, Occlusal Changes, and Palatal Morphology in Children with Mild Class III Malocclusion Treated with Elastodontic Appliances and Bimaxillary Plates. Children (Basel, Switzerland). 2023. PMID: 37508716 / DOI: 10.3390/children10071219
大学病院歯科口腔外科 勤務
福岡市、佐賀市内歯科医院 勤務
医療法人桜裕会「佐賀さくら歯科親子歯科クリニック」開院
佐賀県歯科医師会 会員
神埼市歯科医師会 会員
日本小児歯科学会 会員
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